この記事を監修したのは

諸隈誠一先生
医師、医学博士/九州大学大学院医学研究院 保健学部門 教授/日本赤ちゃん学会理事
1996年九州大学医学部医学科卒業。2018年4月、同大学大学院医学研究院保健学部門教授に就任。
一般社団法人NS Labo(栄養サポート研究所)
管理栄養士
全国約1000名の管理栄養士をサービスパートナーとして、健康やヘルスケア事業に取り組む企業や法人の事業サポートやコンサルティング、管理栄養士の人材育成を行う。
【目次】
Q:妊婦は、卵かけご飯・生卵がNGというのは、本当?
妊娠中は生卵を食べてはいけないと聞きました。普段は食べてもよい生卵が妊娠中に食べられない理由はなんでしょう。
A:妊婦さんは、食材はなるべく加熱しましょう
妊娠中は生卵を食べないほうがいい、という話を耳にしたことがある人も多いでしょう。これはサルモネラ属菌による食中毒のリスクを低減させるためです。妊娠中は免疫力が低下しているため、いつもより食中毒にかかりやすい状態です。
「食品安全委員会」が出している資料によると*1、サルモネラ属菌による食中毒の症状は、激しい腹痛、下痢、発熱、嘔吐。過去の原因食材としては、卵、またはその加工品、食肉(牛レバー刺し、鶏肉)、うなぎ、すっぽん、乾燥イカ菓子などがあげられています。生卵だけでなく、温泉卵のような半熟の卵も生卵と同じように注意をしたほうが良い食べ物です。
対策は加熱して食べるのがいちばんです。加熱はサルモネラ菌が死滅する75℃ 以上、1分以上行いましょう。
加熱は75℃以上・1分以上!
生の卵を絶対に食べてはいけないとか、食べたらすぐに赤ちゃんに問題があるというわけではありませんが、食材は基本的には加熱をして食べるようにし、生卵を食べるときは下記のポイントを守るようにしましょう。
【生卵を食べるときのポイント】
卵がけご飯など、生の卵を食べるときの注意ポイントを紹介します。
- 卵は新鮮なものを選び、殻にひびの入っていないことを確認しましょう。
- 卵を割って器にうつしたものは、取り置きをせず、すぐにいただきましょう。
- 生卵を使った調理器具は、きれいに洗いましょう。生の卵のついたままほかの調理を行うことも避けてください。
- 半熟や温泉卵も、作ったらすぐ食べるようにし、お弁当には入れないようにしましょう。
- 卵を触った手は、そのつど洗いましょう。手についたサルモネラ菌がほかの食材に付着し、二次汚染となることがあります。
妊婦さんは生卵以外の食材は、生でOK?
生卵だけではなく、生肉や生魚、生野菜など火を通さずに食べる食品には、少なからずサルモネラ属菌などによる汚染の可能性があります。
とはいえ、生卵や刺身でのサルモネラ菌等による食あたりの確率というのは、そのときの体調に左右されたり、ある意味運のような部分もありますので、これらも絶対に食べないほうがいいとも言い切れません。
気になる人は加熱して食べるのがベターでしょう。
妊婦は、リステリア感染症にも特に注意
よく火を通していない食材による、「リステリア感染症」にもまた妊婦さんは注意が必要です。リステリア菌は冷蔵庫でも増殖し、感染で赤ちゃんに影響が出ることもあるため注意が必要です。
チーズ・生ハム・パテ・スモークサーモンが、リステリア食中毒の主な原因食品です。リステリア感染症について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
【生で食べるのに注意が必要な食材】
妊娠中に、生で食べるのに注意しておきたい食材は下記のとおりです。
- 生卵
- 温泉卵などの半熟卵
- お刺身
- 生ハム
- スモークサーモン
- チーズ
- レアステーキ
- 鳥わさ など
なお、アレルギー対策で生に限らず「卵を食べないほうが良い」という説もありますが、過去には、妊娠中にアレルゲンとなる卵・牛乳・大豆の摂取を控えるよう勧められたこともありましたが、近年では妊娠中に赤ちゃんのアレルギー性疾患発症予防のための食物制限を行うことは十分な根拠がないため進められていません。
〈参考文献〉
食物アレルギーの診療の手引き2008(厚生労働省)
妊娠中に食べてOK・NGのウソほんと