赤ちゃんを育てるママにとって、悩みのタネとなりがちなのが「授乳」のこと。母乳の量や授乳の回数、おっぱいのトラブル、ミルクのこと…など、さまざまな疑問や迷いを抱えているママは、じつは少なくありません。今回は、出産ジャーナリストの河合蘭さん監修のもと、妊婦さんと子育て中のママに「母乳とミルク」にまつわるあれこれをお聞きしました。
<監修>河合蘭先生:出産ジャーナリスト
妊娠・出産、不妊治療などを専門にするジャーナリスト。著書に科学ジャーナリスト賞を受賞作の『出生前診断』(朝日新書)、『卵子老化の真実』(文藝春秋)などがある。
公式サイト:http://www.kawairan.com/
調査概要
- 調査期間:2019年2月22日〜2019年3月6日
- 調査方法:インターネット調査
- 有効回答数:518
*回答比率(%)は小数点以下第二位を四捨五入しているため、合計が100%にならないことがあります。
*複数回答の質問については、回答比率の合計が100%を超える場合があります。
母乳が出て当たり前、と思ったけれど…。おっぱい事情の理想と現実
Q:妊娠中(妊娠中の方は現在)、赤ちゃんの栄養についてどんな希望を持っていましたか?(単回答)
妊娠中に、母乳やミルクについてどう考えていたかをお聞きしました。すると、「母乳のみ(45.4%)」と「母乳とミルク(混合栄養)(43.6%)」がほぼ半々となる結果に。少数ではありますが「ミルクのみ(1.4%)」とした人もいました。
それぞれの理由をみていくと、「母乳のみ」と答えた方は
「赤ちゃんの栄養や免疫力には母乳がよいと聞いたから」
(28歳/大分県/産後24ヶ月〜)
「経済的だし、いつでもあげられるから外出時の荷物も少なくすむ。哺乳瓶の消毒なども不要だから楽そう」
(33歳/神奈川県/妊娠中)
といった声が多く寄せられました。
一方の「母乳とミルク(混合栄養)」を希望していたママは
「できるだけ母乳で育てたいが、じゅうぶん出るかもわからないし、もし何かあったときに哺乳瓶を使えないのは困りそうなので、混合がいいかなと思っている」
(33歳/静岡県/妊娠中)
「母乳のみだと、夫に預けるときなどに泣き止まなくて大変だと友人から聞いたため」
(30歳/東京都/妊娠中)
など、母乳の量や誰かに預けるときのことを考慮し、ミルク(人工乳)や哺乳瓶に慣らしておきたいという主旨のコメントが中心。「ミルクのみ」では、「早いうちに保育園に預ける予定のため」「持病で薬を飲んでいるので」といった声が挙がっていました。
Q:産後または経産婦の方に伺います。実際の栄養法がどうなったかを教えてください。(単回答)
<生後1ヶ月>
<生後6ヶ月>
産後、実際の栄養事情はどうなったのか、月齢ごとに追ったグラフが上記です。生後1ヶ月では、「母乳とミルク(混合栄養)」が53.1%と、妊娠中に混合栄養を希望していた割合(43.6%)を超えています。つまり、妊娠中は母乳のみを希望していたものの、生まれてみたら生後1ヶ月は混合栄養で育てたケースがあることが読み取れます。
実際、ママたちのフリーコメントを見ると、妊娠中にイメージしていたとおりにはいかなかった!そんな声がたくさん寄せられました。いくつかピックアップしてご紹介します。
赤ちゃんが生まれて、実際どうなった?
「妊娠中は、母乳だけで過ごせると勝手に思っていたが、実際生まれてからは赤ちゃんがおっぱいを上手く吸えなくて、ミルクを足したり搾乳したり、想像以上に大変だった!」
(26歳/静岡県/産後0~5ヶ月)
「最初の1ヶ月は、母乳が出ているかわからなくてミルクも足していましたが、1ヶ月検診で体重の増え方に問題なしだったので、母乳のみに切り替えました」
(29歳/千葉県/産後12~23ヶ月)
「混合栄養にするつもりが、哺乳瓶を嫌がって母乳のみに。短い時間しか他の人に預けられないのがつらいけれど、ミルク代がかからないので経済的!と思うことにした」
(33歳/埼玉県/産後6~11ヶ月)
「病院が母乳のみを推奨していて、入院中は授乳のノルマが達成できず泣きながら授乳…。産後3ヶ月くらいでやっと軌道に乗るまで、かなりつらかったです。ミルクを飲まなくなったので、パパにお世話をお願いするときも大変でした」
(36歳/東京都/産後12~23ヶ月)
「母乳のみを希望していたが、乳首に傷ができて授乳のたびに痛むのがキツかった。夜、寝る前だけミルクを足すようにしたら、赤ちゃんがぐっすり寝てくれてかなり楽になった」
(27歳/和歌山県/産後0~5ヶ月)
私だけじゃない?およそ9割が「母乳で悩んだ経験あり」
Q:産後または経産婦の方に伺います。母乳の悩みを経験しましたか(していますか)?(複数回答)
Q:「経験した(している)」とお答えした方に伺います。母乳の悩みでよくあてはまるものを教えてください。(複数回答)
出産経験のあるママに、母乳のお悩みの有無をお聞きすると、87.5%ものママが「経験した(している)」と回答。どんなことに悩んでいるかを具体的にうかがうと、「母乳が足りているかどうかわからない(57.7%)」がもっとも多い結果に。また、「乳首の傷(48.2%)」「腫れ・しこり・乳腺炎(47.0%)」といったおっぱいトラブルや、「頻繁に授乳しなければならない(46.7%)」を挙げたママも半数近くにのぼりました。
Q:その悩みを乗り越えるために、あなたが相談した人、利用したものは何でしたか?よくあてはまるものを教えてください。(複数回答)
母乳にまつわる悩みを解消する手段(相談した人、利用したもの)をお聞きすると、「出産施設の医療者(61.9%)」が1位に。2位には親や友人を抑え「SNS、ネットの情報(48.5%)」がランクインしました。
続いて同率3位が「出産施設以外の医療者(地域の母乳相談所など)(36.3%)」「親(36.3%)」、5位に「きょうだい・友人・知人(31.0%)」が入り、「夫」は17.0%で6位。母乳の悩みを夫に相談するママは少数派であることが浮き彫りとなりました。
では、ママたちは夫の授乳や育児参加についてどう考えているのでしょう。この問いには、じつにさまざまなご意見が寄せられました。いくつかご紹介しましょう。
父親の授乳、育児参加…どう思う?
「父親が育児するのは当たり前だと思うので、育メンという言葉に違和感。 母親は自分で抱え過ぎず、どんどん父親に育児を任せるべき!うちの夫は喜んで授乳しています」
(32歳/東京都/産後0~5ヶ月)
「その時々で足すミルクの量が変わるので、パパは授乳に関わるのは難しいと思っているみたい。ただ、知識や情報があればできると思うので、積極的に勉強して母親を支えてほしい」
(35歳/千葉県/産後0~5ヶ月)
「授乳は幸せな時間なので夫にもさせてあげたいし、した方が父性はより強くなると思う。でも、絶対してほしいとか、した方がいいとは思わない。父親と母親それぞれが得意なことをして助け合えるのが一番」
(30歳/山形県/産後0~5ヶ月)
「父親はやり方がわからないので手伝えないとよく聞きますが、母親だって最初は初心者です。その認識が広がれば、もっと父親の育児参加も進む気がします」
(29歳/神奈川県/産後0~5ヶ月)
「体の構造上、どうしても平等とはいかない部分もあると思います。例えば、産後の女性は夜中の頻繁な授乳に対応できるようになるそうですが、男性は妊娠出産で体が変化するわけではないので、夜に赤ちゃんが泣いても起きられないなど。なので、平等にこだわらず、お互いが、子どもにとっていいと思ったことをできるのが理想だと思います」
(40歳/東京都/産後12~23ヶ月)
保育園入園のタイミングで、母乳はどうする?
Q:「これから保育園入園予定」とお答えした方に伺います。入園するとき、母乳をどうしたいと考えていますか?(単回答)
産後も働くママが増えた昨今、授乳期間中の赤ちゃんを保育園に預けるケースも珍しくありません。そうなったとき、母乳で育てている場合は続けるか、卒乳するかも迷いそうです。
そこで、赤ちゃんがこれから保育園に入園予定のママに、現時点でのお気持ちをうかがったところ、44.2%が「入園してもできれば母乳は続けたい」とお答えし、「入園までに母乳はやめる(36.5%)」をややリードする結果となりました。
Q:「保育園入園中」とお答えした方に伺います。入園するとき、母乳をどうしましたか?(単回答)
実際、先輩ママたちは、赤ちゃんの保育園入園のタイミングで母乳をどうしたのでしょう。経験者にお聞きすると、「入園までに母乳はやめた」、「入園しても母乳は続け、家にいる間は飲ませた」がともに37.9%で並ぶ格好に。また、13.8%と少数ではありますが「入園しても母乳は続け、家にいる間は飲ませ、昼間も冷凍母乳を飲ませてもらった」と回答したママもいました。
「母乳かミルクか」に振り回されない!先輩ママたちの「心の持ち方」
Q:「母乳?ミルク?」と人に聞かれたことがありますか?(単回答)
さて、赤ちゃんと一緒にいると、周囲から「母乳?ミルク?」と聞かれたり、SNSなどのネット上で「母乳かミルク(人工乳)か」の議論を目にしたりすることがあるかもしれません。
実際、77.4%ものママが「母乳?ミルク?」と聞かれた経験があると回答。聞かれることを何とも思わない人がいる一方で、「なぜ聞かれるのかわからない」「聞いてどうするの?と思う」と、不快感を示す声も多くみられました。
デリケートな「母乳かミルク(人工乳)か」の話題に振り回されないために、先輩ママはどんな心持ちでいるのか、教えていただきました。
「母乳かミルクか」について思うこと
「母乳がよく出る体質で、必然的に完全母乳に。 母乳が出なくて悩んでいる方には『うらやましい』『母乳は楽でしょう』と言われますが、どちらがいいとか楽とか比べられるものではないと思います。実際私は、分泌がよすぎて乳腺炎を繰り返しています。 ミルクでも母乳でも、授乳は赤ちゃんにとってかけがえのないことに変わりありません」
(31歳/神奈川県/産後6~11ヶ月)
「なんでも検索すればすぐ出てくるけれど、医学的根拠が伴わない情報も多いから、情報の取捨選択が大事。 全員に当てはまる正解なんてないと思うので、流されずに自分や子どもに合った方法を見極めていきたい」
(30歳/神奈川県/産後0~5ヶ月)
「私自身1140gで産まれ、ミルクで育ってきましたが、普通に成長し母親にもなれました。だから、大丈夫です!母乳かミルクかにとらわれすぎず、ママがストレスなく生活することがひいては赤ちゃんにとっていいことだと思います」
(36歳/神奈川県/産後0~5ヶ月)
「私が出産した病院は、ママにとって辛くない方法を勧めてくれました。おかげで気が楽になったし、メーカーごとのミルクの特徴などの説明もあったので理解が深まりました。未だに母乳神話は根強くて、母乳で育てるべきとか、ミルクは手抜きだとか言う人もいますが、気にせず自分が決めた方法で育児を楽しんでいきたいです」
(32歳/千葉県/産後0~5ヶ月)
「母乳育児を目指したものの思うように母乳が出ず、自分がまるで欠陥のように感じてとても悔しくて辛かった。でも、離乳した今思うのは、母乳かミルクかなんて成長の過程のほんの一部にしか過ぎない、ということ。あんなに悩んだのはなんだったんだろう、と思えるようになった」
(34歳/神奈川県/産後12~23ヶ月)
まとめ
赤ちゃんとの生活は「妊娠中に想像していたのと違った!」と感じることばかりです。「授乳」はまさにその代表的なもので、さまざまな悩みや迷いに直面するママがとても多いことがわかりました。
それでも、経験者の多くが「過ぎてみればなんであんなに悩んだのだろうと思える」ともコメントしています。渦中にいるママは、周囲の雑音は上手に聞き流しつつ、迷ったら「自分と赤ちゃんにとって楽で心地よいこと」を軸に考えてみるのもいいかもしれませんね。