ホーム > ニンプスラボ > 結果レポート > 効果やリスク、説明できる? 任意はどうする?「予防接種」のギモン

結果レポート

効果やリスク、説明できる? 任意はどうする?「予防接種」のギモン

待ちに待った赤ちゃんとのご対面!と同時にスタートするのが、予防接種とのお付き合い。接種する期間が決まっていたり、無料で受けられるものもあれば任意(有料)のものもあったり、副反応が気になったり…など、ややこしさやいくらかの不安も感じているママは少なくないのでは。今回は、赤ちゃんがいるママたちが思う予防接種のあれこれをみていきます。

 

調査概要

 

  • 調査期間:2019年7月30日~8月27日
  • 調査方法:インターネット調査
  • 有効回答数:566

 

*回答比率(%)は小数点以下第二位を四捨五入しているため、合計が100%にならないことがあります。
*複数回答の質問については、回答比率の合計が100%を超える場合があります。

 

予防接種の「効果」「意味」「リスク」、ママたちの理解度は?

 

Q:赤ちゃんの予防接種に対して、どのような印象をお持ちですか?一番近いものをひとつお選びください。

Q5-1.jpg

 

赤ちゃんが健やかに成長するための通過儀礼ともいえる予防接種。ママたちはどんなイメージを持っているのかうかがうと「ややポジティブな印象(40.3%)」が最も多く、「とてもポジティブな印象(17.5%)」と合わせると57.8%が肯定的にとらえていることがわかりました。

 

一方、ネガティブな印象を持っているママは17.8%。また、4人に1人は「どちらともいえない(24.4%)」と明言を避けています。この結果から、およそ4割は予防接種に対しなにかしら思うところがあるといえそうです。

 

Q:複数ある赤ちゃんの予防接種それぞれの「効果・意味・リスク」について、あなたはどのくらい理解していると思いますか。近いものをそれぞれひとつお選びください。

 

〈無料(定期接種)〉

Q6S1-S2.jpg

Q6S3-S4.jpgQ6S5-S6.jpgQ6S7-.jpg

〈有料(任意接種)〉

Q6S8-S9.jpgQ6S10-.jpg

 

たくさんの種類がある赤ちゃんの予防接種について、ママ自身がどのくらい理解しているかをお聞きすると、どの予防接種も「だいたい理解している」と答えた人がそれぞれ40〜50%前後で最も多い結果となりました。

 

ただし、細かくみていくと「Hib(ヒブ)」では「だいたい理解している」が37.3%で他の予防接種に比べてやや低く、「あまり理解していない(20.3%)」「ほとんど理解していない(22.3%)」も他と比ベるとやや多め。Hib(ヒブ)が定期接種に導入されたのは2013年 4月と比較的新しいことも、理解度がやや低めな理由かもしれません。

 

Q:赤ちゃんの予防接種に関する情報はどこから得る予定(得ていた)ですか?あてはまるもの上位3つを教えてください。(複数回答)

Q9-1.jpg

予防接種に関する情報の入手先では「医師(かかりつけの医療機関)(75.4%)」が最も多く、続いて「市区町村の広告・掲示・通知(57.2%)」、「母子健康手帳(53.9%)」となりました。

 

手軽に情報を得やすい「インターネット」は31.3%、「SNS」は4.2%とごくわずか。予防接種の情報源としてはあまり利用されていないことがうかがえます。

 

実際どうする?任意接種は?予防接種のリアル

 

Q:あなたのご家庭では赤ちゃん(0~2歳まで)の予防接種をどの程度打つ予定(あるいは実際に打った)ですか? 近いものをひとつお選びください。

Q10-1.jpg

 

実際に予防接種をどうする予定か(実際にどうしたか)との問いでは、68.0%が「有料(任意接種)のものも含め、なるべく幅広く打つ(予定)」と回答。「無料(定期接種)のものはすべて打つ(予定)(24.9%)」と合わせると90%以上が定期接種を中心に接種を受ける姿勢であることがわかりました。

 

Q:「有料(任意接種)のものも含め、なるべく幅広く打つ(予定)」「無料(定期接種)のものはすべて打つ(予定)」と答えた方に伺います。予防接種を打つ理由のうち、最もあてはまるものをひとつ教えてください。

Q12-1.jpg

 

Q:「あまり積極的に打たない(予定)」「基本的には打たない(予定)」と答えた方に伺います。予防接種を打たない理由のうち、最もあてはまるものをひとつ教えてください。

Q14-1.jpg

 

Q:「1種類ずつ考えて決めていく」「まだ決めていない・検討中」と答えた方に伺います。そのようにしている理由のうち、最もあてはまるものをひとつ教えてください。

Q16_2-1.jpg

 

予防接種をどうするか(どうしたか)について、その理由もお聞きしました。

まず多数派となった「有料(任意接種)のものも含め、なるべく幅広く打つ(予定)(68.0%)」「無料(定期接種)のものはすべて打つ(予定)(24.9%)」を選んだ人の理由で最も多かったのが「子どもの病気を予防したいから(88.6%)」でした。

 

続いて「あまり積極的に打たない(予定)(1.2%)」「基本的には打たない(予定)(0.4%)」と回答した人の理由をみると、77.8%が「副作用が怖いから」を挙げています。また、「いつどれを打てばよいかわからないから」との回答も11.1%ありました。

 

「1種類ずつ考えて決めていく(4.1%)」「まだ決めていない・検討中(1.4%)」とした人の理由でも「副作用が怖いから」が41.9%で最も多く、「いつどれを打てばよいかわからないから(25.8%)」、「医師など専門家の意見を聞いて(16.1%)」を理由とした人もちらほら。また、「自然治癒力や免疫力を高めたいから」「すべてに効果があるかわからないから」との回答も6.5%みられました。

 

Q:実際に赤ちゃんに予防接種を打とうと考えている(あるいは実際に打った)ものについて教えてください。

 

〈無料(定期接種)〉

Q11S1-S2.jpgQ11S3-S4.jpgQ11S5-S6.jpg

Q11S7-.jpg

有料(任意接種)

Q11S8-S9.jpgQ11S10-.jpg

実際に受ける予定(受けた)の予防接種を種類別にお聞きすると、定期接種(無料)に関してはどの種類も90%近くが「打つ予定・実際に打った」と回答していますが、定期接種であっても接種率が90%に届いていないことには驚きを覚えました。

 

一方、有料(任意接種)ではロタウイルス、おたふく風邪を「打つ予定・実際に打った」としたのは68.0%。インフルエンザは55.5%でした。「まだわからない・覚えていない」とした人の割合が定期接種よりも多くなっていることからも、任意接種を受けるかどうかはママたちのお悩みポイントといえそうです。

 

理解しているつもりだけど…医師に聞きたい! 予防接種の疑問

 

ここまでのアンケート結果をみるかぎり、予防接種に対しては概ね肯定的なスタンスで、その内容もだいたい理解してはいながらも、種類によっては理解度が低かったり、任意接種のものは受けるかどうか悩ましかったり、副作用が気になったり…など、不安や疑問がともなうママも少なくない印象です。

 

そこで、予防接種にまつわる不安や疑問、医師に聞いてみたいことをフリーコメントで寄せていただきました。その一部をご紹介します。

 

〈予防接種の不安や疑問〉

「「市役所から予防接種のスケジュールが届きますが、具体的にどんな病気の予防になるのかまでは説明されていません。無料券が届いたからとりあえず受けよう、という感じになっているので、副作用も含めてきちんと説明がほしいです」(岐阜県/31歳/第1子)

 

「無料(定期接種)と有料(任意接種)の違いや、打たなかったときのリスクについての説明が少ないと思う」(大阪府/30歳/第1子)

 

「予防接種より、実際に病気にかかった方が免疫がつきやすいと聞いたことがあり迷っています。特に、風疹やおたふく風邪が悩ましいです。大人になってかかると大変だと思うのでやっぱり予防接種したほうがいいのでしょうか」(神奈川県/35歳/第2子)

 

「ロタウイルスワクチンは初回接種の期間がとても短いため,妊娠中から詳しい情報を教えてくれたらよかったのに、と思います。問い合わせたときには時期を過ぎていて接種できませんでした」(京都府/29歳/第1子)

 

「海外では定期接種が当たり前なのが日本では任意だったり、その逆だったり。グローバル社会なので、どこまで打てば安心なのか、また打たなかった場合のリスクが知りたいです。例えば子どもが将来海外へ行くと仮定した場合、幼少期に打っておきたい予防接種はあるのでしょうか」(大阪府/30歳/第1子)

 

「自然派育児で、予防接種はしないほうがいいという考えのママに会ったことがあります。本当のところはどうなのかが気になります」(兵庫県/34歳/第1子)

 

「医師から予防接種の同時接種(同じ日に複数の予防接種をすること)をすすめられますが、以前それで体調を崩したので同時接種をしたくないです。同時接種のメリット、デメリットが知りたいです」(埼玉県/33歳/第2子)

 

「より丁寧な情報提供が課題」小児科医のコメント

 

なんとなく理解できているようで、実は不安や疑問もたくさんな予防接種。フリーコメントではママたちの迷いが如実にあらわれていました。

 

この結果を受けて、小児科医の左信哲先生がコメントをくださいましたのでご紹介します。

 

<大阪市立大学大学院医学研究科 発達小児医学 左 信哲医師からのコメント>

 

多くの回答をありがとうございます。医療者側としても今回の結果から学ぶことが非常に多いと思いました。

 

いちばん驚き、対応が必要だと感じたことは、多くの方が予防接種の効果や意味、リスクについて知りたいと思う一方、約半数近くの方が予防接種をある程度理解できていないと思いながら接種を進めているということです。おそらく、この部分に現在の予防接種の大きな問題の一つがあるのではないかと感じました。

 

医療者側は予防接種の効果はもちろん、発熱などの副反応が出る可能性があるということは理解していますし、アンケートでも大部分の方が医療機関から情報を得ると回答されています。なのに、情報が得られていないと多くの方が感じられているということは、医療機関がその情報を十分に提供できていないということが現れているように思います。

 

今はインターネットや様々な媒体で情報を得ることができますが、やはり予防接種を提供する側が直接情報を提供する責任があると考えます。

 

より丁寧な情報提供が医療機関やあるいは行政のほうからなされることが課題と言えるでしょう。そしてできれば、集団の中よりも直接接種の場でしっかりと伝えられるのがより良いのだと考えます。

 

予防接種は多くがお子様に針を刺し、侵襲(しんしゅう/投薬・注射・手術など、生体の内部環境の恒常性を乱す可能性がある刺激全般のこと) を加える処置が必要です。もちろん、症状としては軽いものがほとんどですが、副反応の可能性もあります。

 

その姿を見るだけで嫌になる方もいらっしゃるでしょうし、十分に意義を理解できないままだと、不安がより強くなり、不信に繋がり、予防接種よりは自然に任せるのが良いのではないかと、インターネットなど様々な場で情報を集めて自分なりに接種をしない選択をされる方も少しずつ多くなっているように感じます。

 

ですが、予防接種は病気を防ぐだけではなく、その合併症を防ぐためにも、集団免疫といって集団総体として感染を防ぐためにも必要なことです。

 

今回の回答結果からは、予防接種に疾患名が直接現れている予防接種の方が、その効果やリスクなどを理解されている方が多くなる傾向にあるように感じましたが、つまりは、感染自体というよりは、感染に伴う合併症や、結果生じる後遺症などを防ぐためにも必要であるという部分はうまく伝わっていないのではないでしょうか。

 

例えば、特にHibワクチンや肺炎球菌ワクチンは感染をもちろん防ぐのですが、その結果生じる細菌性髄膜炎を防ぐことが大きな目的の一つとなっています。

 

細菌性髄膜炎は最悪死に至る病気で、最悪を免れても、てんかんや発達遅滞などの後遺症を残す可能性があります。

 

自然に任せるというのは、このリスクをかぶって免疫をつけるという選択と言えるのです。

 

一般的にはなんとなく多くの方が理解されているように自然感染のほうが強い免疫応答が得られます。それは、自然感染は一回で済むのに対して、予防接種は数回に分けて行う必要があるということにも現れています。

 

一方ではワクチン接種の方が有利な場合もあり、Hibや肺炎球菌に対する免疫は、特に2歳未満では自然感染よりもワクチン接種によるほうが強いことがわかっています。

 

自然感染では十分な免疫反応が起こりにくいからです。そして、髄膜炎はこの2歳未満に多いと言われています。

 

ワクチン接種が有利なのは話題になったHPVワクチンもや、その他破傷風ワクチンなども挙げられます。

 

このような情報は少し時間をお取りして説明をしなければなかなか得られない情報ですし、噛み砕いて説明されなければ、なんとなくわかったような感じのまま騙されたように不安の中でワクチン接種をすることになってしまいます。

 

少しでも安心して予防接種ができるように、医療者が正すべき部分があるのだと強く感じました。ですが、丁寧な説明をされている医療機関ももちろんありますし、納得して予防接種をしてほしいと皆思っているはずです。

 

わかりにくいことは積極的に尋ねて頂いて構わないかと思いますので、ぜひ納得して前向きに、子どもたちのためにも予防接種に向き合っていただきたいと思います。

  ayako

赤ちゃんのようす

2ヶ月 3ヶ月 4ヶ月 5ヶ月 6ヶ月 7ヶ月 8ヶ月 9ヶ月 10ヶ月

カテゴリー

facebook twitter mail