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妊娠中に乳幼児の食べ残しを食べてはいけない理由とは? トキソプラズマ&サイトメガロウイルス感染症について

 

妊婦さんなら、妊娠中に生ハムや加熱殺菌していないチーズを食べてはいけないという話は聞いたことがあると思います。これは、食品を介して感染する「リステリア菌」や「トキソプラズマ原虫」という「母子感染する病原体」(※東京都福祉保健局より参照)を防ぐためです。

 

では、妊娠中に上の子や小さな子の食べ残しを食べたり、フォークやコップを共有したり、口にキスをしてはいけないという話は聞いたことがありますか?

 

じつはこれ、母子感染症の中でもあまり知られていない「サイトメガロウイルス」の感染経路になりうる行為なんです。

 

そもそも母子感染ってなに?

 

母子感染する病原体は数多く、感染経路も感染時期もさまざま。同じ病原体であっても複数の感染経路で異なった時期に感染する場合があります。

 

また、感染が赤ちゃんに及ぼす影響もさまざま。胎内で発症するものから生後数十年経って発症するものまであるし、発症率も低いものからほぼ必発のものまであります。

 

そういった母子感染症の中で、母体に症状はなく、あっても軽いものなのに妊娠中の感染によって赤ちゃんに重篤な障害や母子感染症を引き起こす恐れのある疾患を、総称して「TORCH症候群」といいます。

 

<TORCH症候群>

  • T:Toxoplasma gondii=トキソプラズマ原虫
  • O:others=その他、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)などを含む
  • R:Rubella virus=風疹ウイルス
  • C:Cytomegalovirus=サイトメガロウイルス [CMV]
  • H:Herpes simplex virus=単純ヘルペスウイルス [HSV]

 

意外と知られていないサイトメガロウイルスとは?

 

その中の「サイトメガロウイルス」は、世界中のいたるところに存在するウイルスで、それ自体を恐れる必要はありません。子どもも大人も健康であれば感染しても問題はなく、日本では成人の半数以上がすでに感染し、免疫を持っているといわれています。

 

しかし、免疫を持っていない妊婦さんが妊娠中に初めて感染したり、免疫力が低下していると、お腹の赤ちゃんに感染する恐れがあります。

 

赤ちゃんに感染しても必ず症状が出るわけではなく、症状が見られるのは感染した赤ちゃんの10〜30%ほど。流産や死産、脳や聴力障害が起こることがありますが、症状はさまざまです。

 

日本ではサイトメガロウイルスに先天感染している赤ちゃんは毎年3000人以上、そのうち何らかの症状が出てしまった赤ちゃんは毎年1000人くらい生まれていると推定されています。

 

感染経路は、尿や唾液などといったヒトの体液。性感染もありえますが、もっとも多いと考えられるのは乳幼児からの感染です。

 

先ほどご紹介した小さな子どもからの感染がなぜ起きるのかというと、症状はなく無害なものの、出生後にサイトメガロウイルスに自然に感染した子どもの尿や唾液には、生きたウイルスが排出されているから。

 

第2子以降を妊娠中に上の子のお世話で、食事のサポートをしたり、おむつ替えをすることは日常的によくある行為ですが、唾液や尿のついた手で目や鼻をこすったりして接触感染すると、感染のリスクが高まります。パートナーとの性行為で感染することもあります。

 

では、どうしたら感染を予防できるのでしょうか? 

 

サイトメガロウイルスの感染予防法

 

残念ながらサイトメガロウイルスにワクチンはありません。飛沫感染はしませんが、接触感染に注意が必要なので、以下を心がけるようにしましょう!

 

<サイトメガロウイルス予防法>

  • 石けんでしっかり手洗い、うがいをする(おむつ交換、食事の後は特に念入りに)
  • 子どもと食器やスプーンは共有しない
  • 子どもとキスをするときは、唇や頬は避ける(ハグやおでこにキスでスキンシップ!)
  • 子どもの体液やおしっこがついてしまったもの(おもちゃや家具など)はよく洗い、除菌する(サイトメガロウイルスは、石けんなどの界面活性剤、アルコール、次亜塩素酸、乾燥に弱いので、消毒剤による拭き取りや天日干しが効果的です)
  • 妊娠中の性行為の際はコンドームを使う

 

妊婦さんはトキソプラズマにも要注意!

 

サイトメガロウイルスのほかにもうひとつ、母子感染症で同じようにワクチンがないもののあまり知られていないものに、はじめにあげた「トキソプラズマ」があります。

 

トキソプラズマは、サイトメガロウイルスと同じように妊娠中に初めてに感染した場合、お腹の赤ちゃんが先天性トキソプラズマ症になる可能性があります。

 

流産や死産、脳や視力障害が起こることがありますが、症状はさまざま。日本人の1割ほどがすでに感染して抗体を持っており、日本では何らかの症状が出てしまった赤ちゃんが毎年200人ほど生まれていると推定されています。

 

トキソプラズマは、生肉や加熱が不十分な肉、井戸水などの生水、土の中や感染したばかりの猫のふんからの接触感染で感染します。妊娠中にローストビーフやレアなステーキ、馬刺しやユッケを控えるようにいわれるのはそのためです。

 

また、妊娠中に畑や庭で土いじりをしてはいけないというのは、畑や庭の土には猫がトキソプラズマを含んだふんをしている可能性があるから。

 

トキソプラズマは口や目からウイルスが入ることで感染するので、作業中や手袋やメガネ、マスクをし、作業後や手洗いを良くすることが大切です。また、野菜についた土もよく洗ってから食べるようにしましょう。

 

そして、流行している「マタ旅」(妊娠中の旅行)も注意が必要! 普段口にしないもの(たとえば、鹿のレアステーキのようなジビエや、搾りたて未殺菌の生乳など)を口にしたり、普段触れないもの(たとえば、牧場で収穫体験をするときに畑の土に触れるなど)に触れたりすることが、感染につながる可能性もあります。

 

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なお、妊娠中に猫を飼ってはいけないというのはまったくの誤解。トキソプラズマを含んだふんをするのは、感染してから数週間以内の猫だけです。外飼いや野良猫との接触に注意し、猫を飼っている場合は猫用のトイレを毎日掃除することが大切。できれば、掃除はほかの人にお願いすると安心です。

 

トキソプラズマの感染予防法

 

残念ながらトキソプラズマにもワクチンはありません。日常生活の中で、以下を心がけるようにしましょう!

 

<トキソプラズマ予防法>

  • 生肉・非加熱食品(レアステーキや生ハム、サラミなど)を食べない(食べる場合は赤みがなくなるまで(中心が67度)加熱する。
  • 調理器具は肉用・野菜用でわける。
  • 土いじりをするときは手袋・ゴーグルを着用し、作業後は手洗いする
  • 井戸水などの生水は飲まない(飲む場合は煮沸する)
  • 猫を飼っている場合は、生肉を与えない、外飼いしない
  • 猫を飼っている場合は、トイレ掃除は毎日行う(感染力を持つのは排出後24時間後のため)
  • 猫を飼っている場合は、トイレ掃除は可能なら他の人に代わってもらう
  • 猫を飼っていてトイレ掃除をする場合は、グローブを着用する

 

さまざまな母子感染症を予防するには?

 

そのほかにも母子感染症には、以下のようなものがあります。

 

<母子感染症>

  • 風しんウイルス★
  • 麻しん
  • 水痘・帯状疱疹ウイルス
  • 梅毒トレポネーマ★
  • HIV(ヒト免疫不全ウイルス)★
  • B型肝炎ウイルス★
  • C型肝炎ウイルス★
  • HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス-1型)★
  • クラミジア・トラコマチス★
  • 単純ヘルペスウイルス1型および2型
  • B群溶血性レンサ球菌★
  • ヒトパルボウイルスB19
  • リステリア
  • サイトメガロウイルス
  • トキソプラズマ

 

赤ちゃんへの母子感染を防ぐためには、正しい知識を身につけ予防すること、妊婦健診を受診して感染症検査を受けることが大切です。

 

現在(2021年3月時点)、上記で星マーク(★)がついているものは、妊婦健診の血液検査等で感染症検査(抗体検査)が行われています。(感染症検査は医療機関や母子の経過によって異なる場合がありますので、かかりつけの産婦人科で必ず確認してください。)

 

しかし、必須項目ではなくワクチンもないサイトメガロウイルスやトキソプラズマは、任意で感染症検査を受けたり、妊婦さん自身や家族が、日常生活で感染予防するしかありません。

 

ぜひこの機会に母子感染についての理解を深めて、いまできることは何か確認してみてくださいね。

 

妊婦さんへ:後悔しないために正しい知識と予防を!

 

<妊娠中の母子感染を防ぐための11か条>

  1. 石鹸と流水で、頻繁に手を洗ってください。
  2. 小さな子どもとフォークやコップなどの食器を共有したり、食べ残しを食べることはやめましょう。
  3. 肉は、しっかりと中心部まで加熱してください。
  4. 殺菌されていないミルクや、それらから作られた乳製品は避けましょう。
  5. 汚れたネコのトイレを触れたり、掃除をするのはやめましょう。
  6. げつ歯類(ネズミの仲間たち)やそれらの排泄物(尿、糞)に触れないようにしましょう。
  7. 妊娠中の性行為の際には、コンドームを使いましょう。
  8. 母子感染症の原因となる感染症について検査しましょう。
  9. B群溶血レンサ球菌の保菌者であるか検査をしてもらいましょう。
  10. 感染症から自分と胎児の身を守るために、妊娠前にワクチンを打ちましょう。※1
  11. 感染している人との接触を避けましょう。※2

 

※1:現在妊娠している方は、出生後、なるべく早く次の妊娠までの間にワクチンを打ちましょう。
※2:感染者に接触した場合はすぐに病院に連絡してください。水痘や麻疹の場合は、すぐに免疫グロブリンの駐車をすることで発症を防ぐことができるかもしれません。

 

詳しい解説はこちら>>
(先天性トキソプラズマ&サイトメガロウイルス感染症 患者会「トーチの会」より)

 

 

サイトメガロウイルス等の母子感染の予防法を広めるために

 

トーチの会では、トキソプラズマやサイトメガロウイルスなど、まだまだ知られていない母子感染症の正しい知識を広めるために、啓発絵本をつくるためのクラウドファンディングを実施中です。

 

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ぜひご協力をよろしくお願いします。

 

支援者募集はこちらから>>

 

記事協力:トーチの会

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