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双子の産み方は帝王切開じゃなきゃダメ?双子のリスクや分娩方法について

この記事を監修したのは

諸隈誠一先生

医師、医学博士/九州大学大学院医学研究院 保健学部門 教授/日本赤ちゃん学会理事

1996年九州大学医学部医学科卒業。2006年4月より九州大学病院助教、2010年6月より同大学病院産科婦人科特任准教授、2011年1月より同大学環境発達医学研究センター特任准教授、2018年4月同大学大学院医学研究院保健学部門教授。

 

人生のなかで貴重な体験の1つでもあるお産。妊娠がわかると同時に、理想のバーズプランを思い描く方も少なくないかもしれません。しかし、双子や三つ子となると「帝王切開しか選べない」というイメージも。実際はどうなのでしょうか? そこで今回は、双子や三つ子など多胎妊娠におけるリスクや分娩方法についてご紹介します。

 

【目次】

 

多胎妊娠の種類と双子や三つ子が産まれる確率について

 

双子や三つ子などの多胎妊娠には、1つの卵子に1つの精子が受精し、偶然わかれて成長した「一卵性」と、2つ(もしくは3つ)の異なる卵子にそれぞれ精子が受精して成長した「二卵性(もしくは三卵性)」があります。

 

日本で双子や三つ子などの多胎児を出産する確率は1%ほどで、100組に1組の割合です。なかでも、一卵性は約0.4%、二卵性は約0.6%といわれています。多胎妊娠をする原因については、医学的にはまだはっきりとはわかっていませんが、母体の年齢や体質が関わっているというデータもあります。

 

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双子や三つ子の妊娠というと、上記の「卵性」について問われることが多いかもしれませんが、リスク管理の観点からすると、赤ちゃんに栄養を送る「胎盤(絨毛膜)」と赤ちゃんを包む「羊膜」の数がどういう状態かという「膜性」の方が重視されます。

 

1、「二絨毛膜二羊膜双胎(胎盤が2つで羊膜が2つ)」…DD双胎

2、「一絨毛膜二羊膜双胎(胎盤が1つで羊膜が2つ)」…MD双胎

3、「一絨毛膜一羊膜双胎(胎盤が1つで羊膜が1つ)」…MM双胎

 

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双子を産む場合、膜性のリスクには何があるの?

 

リスクとしては、DD双胎<MD双胎<MM双胎の順で高くなります。これは胎盤を共有しているかどうか、羊膜で仕切られているかどうかで、それぞれ以下のような症状が起きやすくなるためです。

 

<MD双胎、MM双胎(一絨毛膜)特有のリスク>

どちらも1つの胎盤を2人(もしくは3人)の赤ちゃんが共有している状態です。

 

・双胎間輸血症候群(そうたいかんゆけつしょうこうぐん)

 

一絨毛膜の場合、1つの胎盤からへその緒(臍帯)を通じて、血管がつながっている部分があります。この血管からどちらか一方の赤ちゃん(受血児)に多く血液が流れると、多血症やうっ血症心不全、浮腫や羊水過多になり、もう一方の赤ちゃん(供血児)は貧血や循環不全、羊水過少といった症状があらわれることがあります(MD双胎の5〜15%)。

 

最初のうちはママの自覚症状がないため、超音波検査(エコー)で羊水量の差(羊水深度が一方が8cm以上、もう一方が2cm以下が目安)を注意深く観察することで発見されます。治療をしないと2人とも子宮内で亡くなってしまうケースもあるため、症状が確認できたら羊水除去や血液の行き来をレーザーで遮断する手術(保険適用)が行われるのが一般的です。

 

・Selective IUGR (一児の胎児発育不全)

 

血管を共有すると行き渡る血液や栄養が不均等になり、1人の胎児が標準より小さい状態になってしまうことがあります。多少の体重差は問題ありませんが、その差が大きくなると胎児死亡に至るなどさまざまなリスクが出てくるので、注意深い管理が必要です。場合によってはレーザーによる手術を行うこともあります。

 

<MM双胎(一羊膜)特有のリスク>

2人(もしくは3人)の赤ちゃんの間を隔てる羊膜がない状態です。

 

・臍帯相互巻絡(さいたいそうごけんらく)

 

仕切りのない部屋に赤ちゃんが同居している状態なので、お互いのへその緒(臍帯)が絡みやすく、突然の胎児機能不全や死亡のリスクが高くなります。そのため、管理入院や帝王切開による計画分娩になることも少なくありません。

 

双子など多胎妊娠に共通したリスクとは?

 

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上記のような膜性によるリスクのほか、多胎妊娠には共通して以下の合併症が、単胎妊娠よりも高くなる傾向があります。

 

・早産(37週未満の分娩)

・妊娠糖尿病

・妊娠高血圧症候群

・HELLP症候群(※1)

・子宮内胎児発育不全

・胎児形態異常

・子宮内胎児死亡

・血栓症

 

とくに多いのが早産(37週未満の分娩)で、単胎では4.7%ですが、多胎では50.8%と約11倍も多くなります(※2)。近年は新生児医療の発達により28週以降であれば赤ちゃんの予後は比較的良好ですが、早産はさまざまな影響を及ぼすので、妊婦健診をきちんと受けて次のような生活を心がけることが大切です。

 

<早産予防のためにできること>

多胎では早産のリスクが大きくなりますが、早産予防のために日頃からできる4つの方法をご紹介します。
 

 

・適度な休息を心がけ、極力ストレスをためないようにしましょう。

 

・妊娠高血圧症を予防するため、塩分の少ない食事を心がけ、むくみを感じたらすぐにケアしましょう。

 

・早産の原因の1つである子宮内感染を防ぐためにも、外陰部は清潔に保ち、おりものの状態も毎日チェックしましょう。

 

・多胎妊娠の場合、体重管理を気にするよりもバランスのよい食生活を心がけましょう。体重増加の目安としては、標準体型(BMI18.5〜25未満)で12kg、痩せ型(BMI18.5未満)で15kg、肥満型(BMI25以上)で6〜7kg程度です。

 

双子や三つ子の分娩方法(産み方)は?

 

双子の分娩は「帝王切開」というイメージがありますが、妊娠高血圧症候群や双胎間輸血症候群などのリスクがなければ、単胎妊娠のときと同じく、破水や陣痛を待って経膣分娩に臨むことも可能です。ただし、産院が定める条件を満たす必要があります。この条件は産院によって異なりますが、以下の項目があげられることが多いようです。

 

<経膣分娩の条件>

※産院によって詳細は異なります。

 

・妊娠週数

赤ちゃんが自力で呼吸できる状態になる34週以降としているところが多いようです。

 

・赤ちゃんの胎位

両方の胎児が頭位(頭が下)であることを条件としているところが多いですが、第1子が頭位であればOKとしているところもあります。なお、第1子・第2子ともに分娩時に頭位である可能性は全体の42%程度(※3)といわれています。

 

・赤ちゃんの推定体重

産院によって異なりますが、1,500〜1,800g以上としているところが多いようです。

 

・母体の合併症の有無

妊娠糖尿病や妊娠高血圧症などがなく、母体のコンディションが良好であることが求められます。

 

・子宮手術の既往の有無

前回の出産が帝王切開での分娩だった場合など、子宮に手術歴がないことが求められます。

 

産院によっては上記のような条件を設けず、多胎の場合は必ず帝王切開としているところや、経膣分娩の条件を満たしている場合でも、破水や陣痛を待たずに「計画分娩」を行うところも多くあります。

 

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その理由は、以下のようなリスクがあり、事前に万全な医療体制を整えておく必要があるためです。

 

<帝王切開や計画分娩が多い理由>

 

・途中で陣痛がストップしてしまう

1人目が生まれたあとに子宮内の圧が下がってお産が進みにくくなることがあります。このような場合、母子の状態が悪化することがあるため、1人目は経膣分娩でも2人目は緊急帝王切開となります。

 

・へその緒が先に出てしまう

臍帯脱出といって、1人目が生まれたあとに、2人目の赤ちゃんより先にへその緒(臍帯)が出てしまうことがあります。そのような状態になると血液供給が途絶えてしまうため、緊急帝王切開に切り替えられます。

 

・胎盤が先にはがれてしまう

常位胎盤早期剥離といって、1人目が生まれたあとに、胎盤が子宮壁からはがれてしまうことがあります。すると2人目の赤ちゃんに酸素や栄養が供給できなくなったり、母体の出血が止まらないなど、母子ともに危険な状態に陥ることがあるため、緊急帝王切開に切り替えられます。

 

・出血量が多い、出血が止まりにくい

弛緩出血(しかんしゅけつ)といって、多胎妊娠により子宮が大きく伸びているため、産後に子宮が収縮せず、胎盤がはがれたあとに出血量が多くなってしまうことがあります。

 

上記のほか、双子の場合、出生体重が平均で2,153g(※4)と低出生体重児になりやすいため、すぐに新生児を専門とする先生に措置してもらえるよう計画分娩にした方が安全という理由もあります。

 

なお、経膣分娩でも帝王切開でも双子の計画分娩の場合、もっとも周産期死亡率が低いといわれる37週前後に設定されます。ただし、双子の平均分娩週数は35.1週と早産になる傾向が高く(※4)、緊急帝王切開になることもあります。

 

また、三つ子の場合の平均分娩週数は32.7週、平均出生体重も1,673g(※4)とさらに早産や低出生体重児になりやすいため、24〜30週くらいまでに管理入院をして、予定帝王切開か緊急帝王切開になることがほとんどです。

 

基礎知識を身につけてお産に望めばより安心

 

帝王切開には、血栓症や次回の妊娠時に子宮破裂を起こしやすくなるなどのリスクがあります。しかしながら、双子の約70%は帝王切開で生まれている(※5)というデータもあるように、多胎妊娠の場合、母子のさまざまな状態を鑑みて、帝王切開になるケースが多いようです。

 

帝王切開はお腹を切るため怖いイメージを抱く方も多いかもしれませんが、“安全に生まれてくる確率を高めるためのもの”と理解すれば、むやみに不安がる必要はなくなります。事前に帝王切開の流れなど、基礎知識を身につけておくようにしましょう。

 

>>帝王切開の利点とリスクとは?

 

これらを理解したうえで、自分がどんな出産を望むのかを担当医と事前に共有しておくことは大切です。しかし、双子や三つ子に限らず予期せぬことが起きるのが出産です。望みどおりにならなかったとしても、赤ちゃんやママが無事であることが何よりベストな選択といえます。

 

 

 

※1:HELLP症候群とは、妊娠中または分娩時にHemolytic anemia(溶血性貧血)、Elevated Liver enzymes(肝逸脱酵素上昇)、Low Platelet count(血小板低下)の3つの主徴候が起き、母体が重篤化する疾病。全妊婦では0.5〜0.9%、妊娠高血圧症候群では10〜20%に発症する。

※2:2017年人口動態統計より

※3:国立研究開発法人国立成育医療研究センターより

※4:平成7年日本産科婦人科学会周産期委員会報告・第6回厚生科学審議会先端医療技術評価部会・生殖補助医療技術に関する専門委員会報道発表資料より

※5:2010ぎふ多胎ネット調査より

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