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妊娠・出産基礎知識

新型出生前診断(NIPT)の年齢制限がなしに。何が変わるの?

この記事を監修したのは

河合蘭先生

出産ジャーナリスト

妊娠・出産、不妊治療などを専門にするジャーナリスト。著書に科学ジャーナリスト賞を受賞作の『出生前診断』(朝日新書)、『卵子老化の真実』(文藝春秋)などがある。

オフィシャルサイト:http://www.kawairan.com/

2022年春から「新型出生前診断(NIPT)」を受けられる妊婦さんの年齢に制限がなくなることが日本医学会から発表されました。これまでは35歳以上、もしくは、超音波検査(エコー検査)で医師に指摘を受けた妊婦さんなど赤ちゃんに染色体異常のあるリスクが比較的高い方のみが対象とされていました。

 

この変更によって当事者である妊婦さんは何が変わるのでしょうか? 

 

そもそも出生前検査とは?

 

出生前検査とは、お腹にいる赤ちゃんに疾患がないかどうかを調べる検査。私たちが定期的に妊婦健診で受ける超音波検査(エコー検査)もそのひとつといえます。

 

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妊婦健診のエコー検査では、おもに赤ちゃんの大きさや羊水の量、胎盤の位置など、見た目で異常がないかを調べます。それに対して、新型出生前診断(NIPT)や羊水検査など(※1)の出生前診断では、妊婦健診ではわかりにくい赤ちゃんの染色体の疾患を調べます。

 

出生前検査がおこなわれるのは、前もって赤ちゃんの状態を知っておくことで、お腹の中の段階から必要な治療をおこなうことができたり、分娩時に最適な医療体制を整えることができるからです。また、出生後の療育環境を準備する期間も生まれます。

 

エコー検査で医師が気になる箇所を発見した場合に受けることもありますが、妊婦さん自身の希望によっても受けることができます。

 

検査を考える際は標準的な妊婦健診とは別に、医師や専門カウンセラーの説明をしっかりと聞いたうえで受ける必要があります。病気があるとわかると妊娠の継続をあきらめる妊婦さんもいるので、受ける前には慎重に考えなければなりません。費用については自由診療になるので保険は適応されません。

 

※1:現在、日本で受けられる出生前検査には、胎児精密超音波検査(胎児ドック)、母体血清マーカー検査、コンバインド検査、新型出生前診断(NIPT)、羊水検査、絨毛検査があります。

 

新型出生前診断(NIPT)とは?

 

出生前検査には、診断が確定できる羊水検査、絨毛検査の「確定的検査」と、病気がある確率の高さが示されるけれど診断にはならない母体血清マーカー検査、コンバインド検査、新型出生前診断(NIPT)の「非確定的検査」の2種類があり、それぞれ受けるのに最適な妊娠週数が限られています。

 

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新型出生前診断(NIPT)は妊娠10週から受けることができる非確定的検査で、最も多い染色体疾患(ダウン症、18トリソミー、13トリソミー)などを調べることができます。

 

日本では2013年にスタートし、母体の採血のみで検査できるという手軽さや流産リスクがないこと、母体血清マーカー検査やコンバインド検査と比べて精度が高いことなどから注目を集めました。

 

これまで対象となっていたのは、高齢出産にあたる35歳以上の妊婦さん、もしくは超音波検査(エコー検査)で異常を指摘された場合などでした。しかし、この春からその年齢制限がなくなりました。

 

なぜ年齢制限がなくなったの?

 

なぜ新型出生前診断(NIPT)の年齢制限がなくなったのでしょうか? その理由のひとつとされているのが、年齢ではなく妊婦さん自身の意思を尊重すべきという考え。そしてもうひとつが、非認可施設での受診の増加です。

 

新型出生前診断(NIPT)を受けられる施設には、日本医学会が認定した「認定施設」と、とくに認定を受けていない「非認可施設」があります。

 

認定施設は出産時に35歳以上であることや超音波検査(エコー検査)で異常を指摘された場合など、一定の条件(※2)を満たす妊婦さんのみが受診でき、とくに染色体疾患のリスクは高くないけれど受診を希望したいという35歳未満の妊婦さんは、非認可施設で受けざるを得ませんでした。

 

出生前検査の実施基準についてはそもそも法律が存在しませんから、非認可施設だからといって違法ということにはなりません。医師による医療行為であることや採血による検査精度は同じです。

 

ただし、認定施設ではかならず出生前診断に精通した臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラー、もしくはそうした専門家と連携関係があり指定の講習を受けている専門家がいて、検査後のフォローアップに責任を持つことが認可の条件となっています。

 

それに対して、非認可施設では医師がいても産科医はいないことが多く、検査後は結果の通知のみとなりフォローアップの体制がないこともあります。

 

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出生前検査は、倫理的・人権的にとてもデリケートで複雑な問題を抱えていることが少なくありません。大切な命に対して妊婦さんが不安を抱いたときに、医療的・心理的に両面からサポートできる体制が整っていること、精通した専門家からの情報提供があることはとても重要です。

 

これらの状況をふまえて、すべての妊婦さんが認定施設で検査を受けられるよう年齢制限が撤廃されました。

 

※2:高齢出産(出産時の年齢が35歳以上)であること、胎児超音波検査(エコー検査)もしくは母体血清マーカー検査でお腹の赤ちゃんに染色体数的異常を有する可能性があると医師に指摘された場合、過去に染色体数的異常を有する子を妊娠・出産した既往がある場合、両親のいずれかが均衡型ロバートソン転座を有していて、胎児が13トリソミーまたは21トリソミーになる可能性がある場合が条件となる。

 

年齢制限がなくなり、妊婦さんへどんな影響があるの?

 

新型出生前診断(NIPT)の年齢制限がなくなったことで、妊婦さん自身にどのような影響があるのでしょうか? 

 

出産ジャーナリストで認証制度を運営する日本医学会の委員会「出生前検査認証制度等運営委委員会」の委員でもある河合蘭さんにお聞きしました。

 

“最近「NIPT」の実施基準が変わり「検査が拡大される」と表現されることが多いようです。こうした報道を見ると、「検査を受けよう、と言われているのかな。自分も検査を受けた方がいいのかな」と感じてしまう方もいるかもしれません。でも、これは、あくまでも「検査を検討している人が、しっかり説明を受けられるようになる」ための変更ということです。「検査を受けるかどうか」の判断は、ご夫婦自身が決めればいいのです。

ただ「自分で決める」ということは、簡単ではないかもしれません。そこで認証施設は、すぐに採血をするのではなく、説明や、判断についての話し合いを重視しています。赤ちゃんの病気の可能性が高いとわかるととても苦しいものですが、認証施設での検査が増えれば、こうしたつらい時間を孤立した状態で過ごさずにすむ妊婦さんが増えることが期待されます。

新しい実施基準に基づいて、今後、全国で新たに認証される医療施設が決まってきます。また出生前検査認証制度等運営委員会のウェブサイトができることになっています。そこでは認証施設や検査について相談できるところのリストが見られるようになります。出生前検査については、NIPTだけではなく、超音波検査や羊水検査など、さまざまな出生前検査についても説明しています。病気がある赤ちゃんの福祉などについても妊婦さん向けに解説していますので、オープンしましたら、ぜひご夫婦で利用してください。”

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