この記事を監修したのは
赤木かん子先生
児童文学評論家
1984年に、子どものころに読んでタイトルや作者名を忘れてしまった本を探し出す「本の探偵」として本の世界にデビュー。以来、子どもの本や文化の紹介、ミステリーの紹介・書評などで活躍している
いい絵本って、どんな絵本?
「赤ちゃんにどんな本を読んでやればいいですか?」
この答えはないわけではないのです。
あるんです。
あるんですが、それを納得していただくのは、たいそう難しい……。
なぜかというと、親というのはどうしても「我が子になるべくいい本を与えてやりたい」と思ってしまうからです。
いい本を与えたほうがよく育つだろうとつい思ってしまうのです。
その気持ちはとてもよくわかりますよ。すごくわかります。
でもね、ここが大事なところですが、いい本イコールある一人の人にとって楽しい本とは限らない…。
そんなのは当たり前のことです。
ちょっと考えたら、すぐにわかることでしょう?
だって、まず個人の好みってものがあります。
どんないい本だって、好きじゃない本はおもしろくないに決まってます。
えっ?赤ちゃんに好みがあるのかって?ありますとも!
人間の赤ちゃんはものすごく頭が良くて、知的には素晴らしいスピードで大きくなります。まだうまく動けない、話せない赤ちゃんでも大人の話すことをよくわかっているものです。赤ちゃんにだって個性や好みがあるんです。
ですから一番いい方法は、公共図書館のように赤ちゃん用の本がたくさんあるところに連れて行って、ねえ、どれがいい?と聞くことです。
好きな本を読むのが幸せ
人間は自分中心の生き物です。
赤ちゃんだって自分の思い通りにしたくて、それが一番心地よい。
そして大人も自分の思い通りにするのが一番心地よい。自分がいいと思った本を赤ちゃんに与えて、それを赤ちゃんが喜ぶと一番満足するのです。
だから大人と赤ちゃんの好みが違うときは、どちらの好みを優先するかという問題になるでしょう。
大人の幸福と赤ちゃんの幸福、どっちを優先するか。本来ならそんなことは考えるまでもないことでしょう。
でも大人も自分が幸福になりたいですから、そこで目がくらむのです。
世間でいいといわれている本を読んでやっていれば、「安心」という気分になりやすいのは確かです。
でも、それは何も保障してはくれません。
そして、安心なのは誰でしょう?
そこに赤ちゃんの安心や幸福はありますか?
人間は、自分のやりたいように生きたいのです。
それが命に関わらない限り…。
そうして、どんな絵本を選んでも、赤ちゃん絵本で成長が阻害されるなんてことは考えにくいことです。
むしろ読みたい本は読ませてもらえず、読みたくない本ばっかり読まされることのほうが赤ちゃんの心を損ねることでしょう。
だってそんなことされたら、人間は誰だってイライラしますよね?
ですから命に別状のない限り、最後の選択権は本人に返すほうがいいのです。
私はあなたの選択を支持するよ、と周りの大人にいってもらえれば、赤ちゃんは安心して、のびのびと自分で考える子どもになるチャンスがもらえます。
どうぞ、どの本を読むかは、本人に聞いてください、
本がたくさんある場所へ連れて行くのが大人の仕事です。