この記事を監修したのは
赤木かん子先生
児童文学評論家
1984年に、子どものころに読んでタイトルや作者名を忘れてしまった本を探し出す「本の探偵」として本の世界にデビュー。以来、子どもの本や文化の紹介、ミステリーの紹介・書評などで活躍している
今回は、赤ちゃんにとって絵本は魔法だ、というお話。
赤木かん子さんが教えてくれる赤ちゃんの気持ち、読むと自分が小さな赤ちゃんになったような気がするから、不思議です!
絵本との出会いは、こんな感じ
「どうやって赤ちゃんに絵本を読めばいいの?」についてお話しする前に、赤ちゃんがどうやって絵本を認識するかというお話からはじめましょう。
生まれてはじめて絵本をみた赤ちゃんはけげんそうに、見せてくれる人の顔をみます。
これはなんだ?なにするものだ?というわけです。
そうして絵本を読む人の顔を見ます。
だって、音が出てくるのは読んでくれる人の口からですからね。
おまけにその人がいうことばは、いま現在とはまったく関係の無いことばです。
いま目の前にスプーンはないのに、いきなりスプーン!という…とかね。
なぜいまスプーンていうかな?
赤ちゃんは驚き怪しみます。
こいつはいったい、なにをいっているんだろう?
というわけです。
でもあるときふいに気がつく。
この人はこの本という道具の、同じ本の同じページの同じ絵のところをあけると同じことをいうぞ、って!
ユーレカ!!(*)
この道具の仕組みがわかったぞ!
それからは、自分の気に入っているページをあけて、読め!
というようになります。
(*)古代ギリシャ語で、「われ見いだせリ(わかったぞ)」という意味。アルキメデスの原理を発見したときに叫んだといわれる言葉。
音楽を聴くように、繰り返し読む
音楽は覚えてからが楽しい、というところがあります。
せっかくCDを買ったのに、一回しか聴かないという方はいらっしゃらないでしょう。
歌は全部覚えてしまって自分でも歌えるようになってからも楽しいのですから。
小さい人が絵本を楽しむのはそれとよく似ています。
飽きるまで、繰り返し繰り返し1冊の本を深く深く楽しむのです。
子どもと大人はいろいろなところが違いますが、本の楽しみ方も違うのです。
1回読んだら終わり、というのは大人の読み方です。
赤ちゃんは繰返し同じことばを聞きたがります。
そうそうそうそう、ここをあけたら、そういうぞ!
ほら、きた~っ!というふうに――。
さあ、これで赤ちゃんは、本、という道具を知り、使い方を手に入れました!
そうして自分でもめくろうとするでしょう。
おすわりできて、ページをめくれるようになると、赤ちゃんはその魔法を楽しみます。
ページをめくるだけで、絵が現れたり消えたりする……
それはじゅうぶん魔法だと思いませんか?