この記事を監修したのは
加藤美穂子先生
JPIC(財)出版文化産業振興財団読書アドバイザー
絵本の楽しみや読み聞かせの大切さを伝える。
《あらすじ》
おむすびさんちの田植えの日。おとうさんは、手伝いのみんなと田植えをはじめます。1本1本ていねいに。美味しいおむすびができるかな。
読んでいてほっとする、すてきな絵本
この絵本は、丸ごと、昭和の風物詩です。緑ゆたかな田園風景、結(ゆい)と呼ばれる農作業の助け合い、人力の田植え。
たたみに茶タンス、ちゃぶ台の食事風景など、あれもこれも、加岳井さんの中で、しっかり絵にして残しておきたかった光景だったのでしょう。
おむすびさんちの田植えの日に、手伝いに来てくれたのが、具のしゃけさんとたらこさんおいなりさんとは、シュールすぎます。しかも、畦(あぜ)で食べる昼食は、おむすびさんがおにぎり、おいなりさんがいなりずし、うめぼしさんが日の丸弁当だなんて!
でも、子どもは理屈を言いません。
このユニークな面々を、心からおもしろがってくれます。
はたらく喜びから達成感まで温かく伝わってきます
絵本でみんなを笑わせたい!という加岳井さんの気持ちが、あちこちに満ち溢れています。せっせのせ、シャカシャカシャカなど、オノマトペに乗せた一生懸命だけど、どこかとぼけた表情が、見るたびに、笑いを誘います。
また、この本は、日本人の命の源である、お米のことを知るいい機会になるでしょう。「おいしいおむすびできるよに」ととなえながら、田植えする姿に、お百姓さんの祈りが伝わってきます。
みんなでお風呂に入って、泥と疲れを流し、ほっこりするラストシーンもすてきです。湯気とともに、労働の喜びや達成感までも、あたたかく伝わってくるようです。