この記事を監修したのは
諸隈誠一先生
医師、医学博士/九州大学大学院医学研究院 保健学部門 教授/日本赤ちゃん学会理事
1996年九州大学医学部医学科卒業。2006年4月より九州大学病院助教、2010年6月より同大学病院産科婦人科特任准教授、2011年1月より同大学環境発達医学研究センター特任准教授、2018年4月同大学大学院医学研究院保健学部門教授。
仕事の都合や里帰りなど、妊娠中の移動に飛行機の利用を考えている人も多いのではないでしょうか。妊娠中に飛行機に乗ってもよいか不安なかたも多いかもしれません。
妊婦さんが飛行機を利用する際の留意点をまとめました。
妊娠中、飛行機には乗れる?
妊娠中も、飛行機はもちろん電車や新幹線などの公共交通機関を利用することができます。ただし、飛行機に乗れるのは、航空会社にもよりますが概ね妊娠9ヶ月までです。臨月については航空会社によって対応が異なります。
たとえばANA国内線の場合*1は、予定日の28日以内の搭乗には医師の診断書が必要。JAL国内線の場合*2は、予定日の28日~8日までは医師の診断書、出産予定日7日前までは診断書に加えて医師の同行が必要です。
また、妊婦さんが1人で、上の子などの小さな子を連れて搭乗する場合、通常は抱っこであれば航空券が不要な2歳未満のお子さんであっても、お子さん分の航空券の購入が必要(抱っこでの搭乗ができない)ことがあります。詳しくは各航空会社にお尋ねください。
飛行機での里帰りを予定している場合は、これらを踏まえて早めの帰郷や、医師への相談を済ませておきましょう。
海外への渡航を予定している場合は、国によっては妊婦さんの受け入れに制限があることも。ご注意ください。
なお、多くの航空会社で妊婦さんは優先搭乗(事前改札)のサービスが受けられます。
妊娠初期の飛行機搭乗、ここに注意
妊娠初期は、診断書等の提出は必要ありませんが、体調の変化などを考えると乾燥・感染などには注意が必要です。
・乾燥対策
ご存じのように飛行機の中はとても乾燥します。妊娠初期は “黄体ホルモン(プロゲステロン)”の分泌増により、肌が揺らぎがち。乾燥でかゆみが出たり、かさかさしてしまうことも。搭乗の際は特に肌の保湿を心がけましょう。
乾燥しているということは、冬場であればインフルエンザ等の感染にも留意が必要です。こまめに水分をとって喉を潤す・食事の前には手を洗うなどの対策を心がけましょう。
・寒さ対策
機内は温度が低くなることもしばしば。ブランケットの貸し出しサービスもありますが、数に限りがあります。冷えや寒さに対する備えを。
・トイレ対策
妊娠中は、子宮で膀胱が圧迫されることで頻尿になる妊婦さんも少なくなりません。搭乗前にはお手洗いを済ませておき、尿漏れが気になるかたは、尿漏れ用のパットやシートも検討してみては。
トイレが気になるからといって水分を控えすぎるのはNGです。妊娠中の身体はいつも以上に水分を必要としています。少しずつでよいのでこまめに水分補給をしましょう。
・頭痛対策
妊娠中に限らず飛行機の気圧の変化で頭痛を起こすことがあります。妊婦さんの場合、とくに妊娠初期は頭痛に悩まされるかたもいますが、はっきりとした原因はわかっておらず、安易に薬(鎮痛剤)を飲むこともできません。
頭痛が気になる妊婦さんは、体調が落ち着くまでは無理な搭乗はしないほうが良いかもしれません。
・むくみ対策
妊娠中は脚がむくみがち。長時間同じ姿勢でいる飛行機は、いつも以上に脚がむくんだりほてったりすることがあるかもしれません。脚を動かす工夫やツボ押しで血行をよくしておきましょう。
気圧の変化により、身体のむくみや息苦しさを感じることもあるかもしれません。飛行機に乗る際は、下着は締め付けの少ないもの、靴や衣類も履き心地・着心地の良いゆったりしたものにしましょう。
出かけるときには「母子手帳」をお忘れなく
飛行機での移動に限らず、妊婦さんが長距離の移動をする際は必ず「母子手帳」を持参しましょう。もしものことがあり、あなたが話せないような状態でも、母子手帳を見れば妊娠月数(週数)、これまでの経過などが一目でわかり、適切な診断と治療ができます。
母子手帳の中に、保険証のコピーも入れておくとより安心です。