たしか、小学生の頃だったと思う。
テレビのワイドショーをつけると、アグネス・チャンが批判されていた。
出産後、子どもを連れて仕事に行ったのだという。
それを見たとき、何がいけないのだろうと思ったことを今でも覚えている。
連日放送されていたからなのか、なぜかとても印象的な出来事だった。
かと言ってその後を追うようなことは特にしてはいなかったのだけど、授乳(未だに3時間おき)のあとすっかり目が覚めてしまった深夜、なんとなく思い出しネットで検索してみたら、批判する側の中心にいたのは林真理子さんだったことをはじめて知った。
むかしananで特集をお手伝いさせていただいたことがある。
たしかタイトルは、『みんな大好き♡ 林真理子文学読本』。
林真理子さんの数ある作品の中から特に共感する名言を、彼女のファンを公言している何人かのタレントさんから選んでいただき、それを紹介するというページをつくった。
わたし自身、林真理子さんの作品は好きだし、彼女の言動には共感するところが多い。
しかし、その件に関して、小学生だったわたしは同意できなかったし、
実際、わたしはつい先日、撮影現場に娘を連れて行った。
30年以上前、子どもながらに思ったことは、大人になったいまも変わらなかった。
しかし、いまは子連れ出勤に否定する側の意見も十分に理解できる。
声にしないだけで、心の中では批判的に思う人もいるだろうし、迷惑に感じる人もいるだろう。
わたしが娘をロケに同行したのは、子連れでもぜひとお声がけいただいた依頼だったからだ。
仕事のときはシッターさんにお願いすることを基本としているが、今回はじめて受けたその媒体では、編集長やほかのライターさんも子連れだと聞き、ではわたしもとそうさせていただいた。
正直、子連れで仕事場に行くということがどんなものか試してみたいという気持ちもあった。
いまのところわたしに批判の声は届いていないが、結論からいうと
子連れ出勤は、まあとにかく大変だった。
娘は終始ご機嫌だったが、次回もし同じ条件をもらったとしても、現場に娘を連れて行くかどうかは、ちょっと考える。
子連れロケデビューの日は、出産後ある意味もっともハードな一日になった(ペットの旅行に関するウェブサイトの撮影だったため、子連れ+犬連れという状況だったのも大きい。とはいえ、年子のお子さんを持つママの大変さなんてこの比じゃないんだろうなと白目)。
けど、やってみてよかったなと思っている。
“やってしまったことの後悔は日々小さくなるが、
やらなかったことの後悔は日々大きくなる”
そう言ったのは林真理子さんだ。
『野心のすすめ』の中でも語られている彼女の座右の銘である。
アグネス論争の興味深い点は、それを擁護する側はもちろん、批判する側も女性だということ。
対極する意見を論じていた女性たちは、しかし相反する立場にいるわけではなかった。
両者は同じ、働く女性。
批判する側の立場にいるのは、あるいは自分だったかもしれない可能性はゼロではない。
実際、アグネス論争から10年後に林真理子さんは出産している。
子連れ出勤をしたという話は聞いたことがないが、出産後それでも働くなかで、どんなことを考えていたのか、いつか機会があれば伺ってみたいと思う。
最近、政府が推奨しはじめたことでまた子連れ出勤が話題になっているけれど、出産後も仕事をつづけたいと思う女性が抱えている問題の根底にあるものとそれは同じようで実はまったく別ものであるように感じている。
そもそも女性が働くということ自体、子連れ云々の以前に、いろんな問題や障害が伴う。
それはいまにはじまったことではない。
女性が家庭以外で働くようになってからずっと纏わりついている課
アグネス論争からすでに年号は2回変わった。
社会はまだまだ変わりようがあると思う。
変わっていけばいいなと思う。
そして、その変化のひとつになれたらとも思う。〈つづく〉
その思いは娘を持ってさらに強くなった。
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Profile 【著者】堀川 静
フリーランスライター。「Hanako」や「BRUTUS」などの雑誌を中心に広報誌や地方自治体のブックレット、WEBマガジンやコーポレートサイトなど、幅広いジャンルの媒体で執筆。2018年9月に第一子となる女の子を出産。現在、育児と仕事の両立を模索中。