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【11|出産〜わたしの場合】

 

「こんなことってあるんですね」

 

その声に驚き、何が起きたのかと目を開けると

 

さっきまで神妙な面持ちだった先生の表情は一変、

 

笑っている。

 

 

促されるままエコーを覗くと、

 

わたしのおなかの中で逆さだったその子は、いつもと違うほうを向いていた。

 

 

 

体操をしても、漢方を飲んでも、お灸をしても、整体をしても、それでも一向に変化はなく、

 

 

 

その前の週の健診でも、前日の健診でも、外回転当日、看護師さんによる触診の際にも、ずっと上を向いたまま頑なに逆子ポジションをきめこんでいたその子は、

 

なんと、というかなぜか、

 

外回転の前に自ら回転していたのだ。

 

 

生まれてはじめてする入院の心細さに加え、同意書に記された輸血の可能性、合併症の危険性、それ以前にまず採血の注射針の太さに慄き、点滴の管が刺さった状態でいるという状態に耐えかね、施術前にしてすでに心折れそうになっていたわたしを見兼ねて自らくるりと回ってくれたのか。

 

だとしたら、なんて

 

なんて親孝行なんだ!

 

ありがとうー!

 

わたしは喜んだ。

 

こんなことってあるんだな。念ずればなんとかっていうけれど、妊娠や出産のような思考を超えるある種神秘的な体験は、ある意味、祈った通りになるというか、思った通りになるというか、想像を超えた何かそういうことを多く伴うものなのかもしれないと、変に納得したりもした。

 

 

それから3週間後。

 

出産予定日の2日前、わたしは破水した。

 

当然だが、突然だった。

 

 

その前日の健診では子宮口も開いておらず、診たところ出産はまだ先になりそうですねと言われていたこともあり、入院準備はおろか、心の準備もまだできてはいなかった。

 

 

破水した夕方、自分ではその判断がつかないし、とりあえず落ち着こうと、ちょうど買ったばかりのピーナツバターのパンを何口かかじり、おいしいけどかたいという感想を持ったあと、その日ランチした友人にメールを送ったりした。

 

そして、やっぱりこれ破水だよなと、飼い犬にごはんをあげたあと、ひとりで病院に向かった。

 

着いた病院で車椅子に乗るよう言われたがそれは大げさではないかと、自分が歩けることを伝え、断った。

 

しかし、それでも乗れという看護師さんに、わたしは歩けるどころか車だって運転してこれたのだということを伝えると怒られた。

 

そして、ほどなく破水と診断された。

 

お財布ひとつで向かった足でそのまま入院となるのだが、

 

同時にそれは希望していた水中出産ができないということを意味していた。

 

 

バースプランとして希望していた水中出産ができないのは残念ではあったけど、破水だと診断されてから、少量とはいえ止まることなく破水しつづけている状況は、そんな気持ちを容易く通り越した。

 

二の腕から背中にかけて、ざわざわと不安が行ったり来たりしていた。

 

 

「このままだと羊水なくなりませんか?」

 

看護師さんに聞いてみたりもした。

 

 

不勉強にも程があるのだけれど、そのときになってはじめて、羊水は赤ちゃんのおしっこでできていて、母体が水分補給をしっかりしつづけ、赤ちゃんが元気な限りつくりつづけられることを知った。

 

 

入院した夜はちょうど連載の入稿日だったこともあり、病室のベッドからメールで原稿を納品したりもした。

 

 

意外と冷静だった。

 

 

昼夜問わず2〜3時間おきにNST検査が行われ、

 

 

そのたびに、赤ちゃんは元気だと看護師さんは教えてくれた。

 

 

しかし、陣痛は来ない。

 

 

不安だった。

 

 

生理痛のような感覚はあるのだけど、

 

噂に聞く、耐えられないほどの痛みではない。

 

 

わたしが痛みに強いだけ?

 

いや、そんなことはないはず。

 

シャワーはもちろんトイレ以外は歩行さえ禁じられたわたしは、ひとり病室のベッドでそのときを待った。

 

 

 

しかし、陣痛は来ない。

 

 

破水がはじまってから24時間が経っていた。

 

 

つづく

 

 

 

■この日のBABY365

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Profile 【著者】堀川 静

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フリーランスライター。「Hanako」や「BRUTUS」などの雑誌を中心に広報誌や地方自治体のブックレット、WEBマガジンやコーポレートサイトなど、幅広いジャンルの媒体で執筆。2018年9月に第一子となる女の子を出産。現在、育児と仕事の両立を模索中。

 

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