この記事を監修したのは
諸隈誠一先生
医師、医学博士/九州大学大学院医学研究院 保健学部門 教授/日本赤ちゃん学会理事
1996年九州大学医学部医学科卒業。2018年4月、同大学大学院医学研究院保健学部門教授に就任。
一般社団法人NS Labo(栄養サポート研究所)
管理栄養士
全国約1000名の管理栄養士をサービスパートナーとして、健康やヘルスケア事業に取り組む企業や法人の事業サポートやコンサルティング、管理栄養士の人材育成を行う。
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Q:上手にカルシウムをとる方法は?
妊娠をすると、歯や骨が弱くなると聞きました。
外食がちな私が上手にカルシウムをとる方法は?
A:赤ちゃんの成長にはカルシウムが必要。しっかりとることが大切です。
お腹の赤ちゃんは自分のからだの成長に必要なカルシウムを、胎盤を通して受け取り、骨や歯を作ります。ですからカルシウムは、妊娠中にしっかりととっておきたい栄養素の一つです。
厚生労働省発表の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、妊娠中は腸管からのカルシウム吸収率が著しく増えることが確認され、妊婦だからといって特別にカルシウムを多くとる必要はないと報告されました。そのため、妊婦のカルシウム付加量は示されていません。
しかしこれは「必要なカルシウム量(20代女性であれば650mg)をきちんととっていれば」という条件付きです。
残念ながら日本人は、慢性的にカルシウムが不足気味です。同じく厚生労働省発表の「平成 29年国民健康・栄養調査結果」によると、20代女性の平均カルシウム摂取量は420mgです。さらに妊娠高血圧症候群などの胎盤機能の低下が考えられる場合には、カルシウム吸収率が増えることはあまり期待できず、一層、積極的に食事から摂取する必要があります。妊娠をきっかけにカルシウムを積極的にとって、赤ちゃんにしっかりと届けたいものです。
母体にも必要! 産後も毎日しっかりとることが大切
妊娠中だけでなく、授乳中にもカルシウムは必要です。授乳中には大量のカルシウムが母乳に移行してしまうので、母体の骨量はどうしても減ってしまいます。これは一時的な生理的変化なのでどうしようもないことです。減った骨量は、母乳を終えてから6ヶ月程度で元に戻りますが、毎日のカルシウム摂取が必要なのは言うまでもありません。
カルシウムが多く含まれる食品には以下のようなものがあります。
■カルシウムを多く含む食品
- 牛乳
- 乳製品(ヨーグルト・チーズなど)
- 小魚(ししゃも・桜エビ・じゃこなど)
- 大豆製品(厚揚げなど)
- 青菜(モロヘイヤ・小松菜など)
- 海藻類(ひじき、刻み昆布など)
なおカルシウムだけをとればよいのではなく、カルシウムの吸収率を高めるビタミンD(きくらげ、干ししいたけ、きのこ、レバー、魚類などに含まれる)や骨作りを助けるビタミンK(納豆などの発酵食品、乳製品、肉、卵などに含まれる)も必要です。これらを一緒に摂取するよう心がけましょう。
産後は太陽の下で適度な運動も行うのも、母体の骨量回復に効果的です。
〈参考文献〉
日本人の食事摂取基準(2015年版)(厚生労働省)
平成29年「国民健康・栄養調査」の結果(厚生労働省)
※内容を一部修正いたしました(2019/1/25 14:00)