窓の外がうっすら明るくなってくるのを見るたびに、ああ夜を越えたのか。と、ほっとした。
今日もなんとか無事に朝を迎えることができたんだ。と、ヘロヘロになりながら。
こんな毎日、いつまで持つかなと不安になったりもしたけれど、今わたしはぴんぴんしているし、気がつけば出産からもう1ヶ月が過ぎた。
破水からはじまり、入院二泊目の深夜突如やってきた陣痛、そして出産を乗り越え、人生の大仕事を成し遂げた気でいたわたしは、そのあとにやってくる本当の大仕事のことを全くわかっていなかった。
ほっとする間もなく、母子同室(つまり、出産を終えた瞬間、待ったなしでジェットコースターに同乗)。
十月十日、おなかの中にいたのはあなただったのね。と感慨に浸り、深夜ひとり泣くひまはかろうじてあったものの、完全母乳を推奨する病院を選んだわたしに待っていたのは看護師さんによる連日連夜どころか毎時間の授乳トレーニングだった。
妊娠中、案外そこまで大きくならなかったなと残念がっていた胸はここにきて急成長。“おっぱい”の本当の役割というものを知ることとなるのだが、しかしその道のりはそうやさしいものではなかった。
はじめからシャーシャーと音がするほど母乳が出るというひともいるらしいが、残念ながらわたしはそうではなかった。
自分へのフォローも込めて補足すると、母乳の出には胸の大きさや遺伝は関係なく、血行や体調、疲労やストレスなどの影響が大きいという。
出産で出血量が一般的な量の倍あったせいなのか、結果「すごい安産でしたね! お上手でした!」とドクターにも助産師さんにも褒めていただいたが(これで安産? うそでしょ。だとしたら難産ってどれだけ痛いの? と唖然としたことは割愛したとして)、とはいえ消耗した体力のせいなのか、立ち会ってくれたにも関わらず夫に対して実は底知れぬストレスを抱えていたのか。
理由はわからないが(後からこの記事を読んで納得)、とにかくわたしの場合すぐには母乳が出なかった。
落ち込むわたしに、「赤ちゃんは3日分のお弁当を持って産まれてくるので大丈夫です」と、やさしい看護師さんは言ってくれたが、産まれたばかりの小さな小さな我が子がその身体のすべてを震わせ泣くのを前にして、与えるべきものを与えられないというのは、本当につらかった。
そして、その次につらかったのが……。〈つづく〉
★『BABY365のある日々』は毎月第一木曜日更新です。
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Profile 【著者】堀川 静
フリーランスライター。「Hanako」や「BRUTUS」などの雑誌を中心に広報誌や地方自治体のブックレット、WEBマガジンやコーポレートサイトなど、幅広いジャンルの媒体で執筆。2018年9月に第一子となる女の子を出産。現在、育児と仕事の両立を模索中。