この記事を監修したのは
諸隈誠一先生
医師、医学博士/九州大学大学院医学研究院 保健学部門 教授/日本赤ちゃん学会理事
1996年九州大学医学部医学科卒業。2018年4月、同大学大学院医学研究院保健学部門教授に就任。
一般社団法人NS Labo(栄養サポート研究所)
管理栄養士
全国約1000名の管理栄養士をサービスパートナーとして、健康やヘルスケア事業に取り組む企業や法人の事業サポートやコンサルティング、管理栄養士の人材育成を行う。
【目次】
- コーヒー1日1~2杯程度はOK
- カフェインの身体への作用
- 妊婦さんの身体への影響は?
- 赤ちゃんの身体への影響は?
- 市販の飲み物、カフェイン量一覧
- カフェインレスとノンカフェインの違い
- 授乳期にも注意!
- 妊婦さんOK!のカフェインレス商品
妊娠中は、ホルモンの影響もあり気持ちが不安定になりがち。特に働く妊婦さんは、仕事中や休憩時間に飲むコーヒーや紅茶が、気持ちを和らげてくれることもあると思います。
一方で、コーヒーや紅茶に含まれるカフェインが気になる方も多いのでは?妊婦さんと赤ちゃんのカフェインの影響について解説します。
リラックスできるなら、コーヒー1日1~2杯程度はOK
まず結論から言うと、妊娠中もコーヒーを1日1~2杯程度飲むことでリラックスできるなら、我慢することでイライラしてしまうよりもよいでしょう。逆に、コーヒー飲むことが罪悪感や心配につながる場合はあまりおすすめできません。
なお、厚生労働省のホームページでは、WHOの指針を紹介しており*1
”妊婦に対し、コーヒーを1日3から4杯までにすることを呼びかけています”
と、記載しています。さらに、英国食品基準庁(FSA)の見解もあわせて紹介しています。
”...妊婦がカフェインを取り過ぎることにより、出生時が低体重となり、将来の健康リスクが高くなる可能性があるとして、妊娠した女性に対して、1日当たりのカフェイン摂取量を、WHOよりも厳しい200mg(コーヒーをマグカップで2杯程度)に制限するよう求めています。”
※参考※コーヒー1杯のカフェイン含有量:100~150mg
なお、コーヒーや紅茶だけでなく、緑茶・ウーロン茶・ジャスミン茶・ココア・コーラにもカフェインが含まれています。
カフェインの身体への作用
ところで、カフェインといえば「飲むと眠れなくなる」イメージですが、それ以外にも身体にさまざまな作用があります。妊娠していないときでも、コーヒーなどのカフェインを大量に摂取すると不眠、不穏、精神興奮、筋緊張、頻脈、呼吸促進などがみられます。
詳しい作用は以下の通りです。
- 中枢神経興奮作用:感覚受容や精神機能を高め、眠気や疲労を除去し、運動機能を高めます。
- 骨格筋に対する作用:疲労感をおさえ、活動性を増大させます。骨格筋に直接作用し筋肉の収縮を増強します。
- 心臓に対する作用:心筋に直接作用し収縮力、拍出量を増加させます。
- 利尿作用:腎臓の血管を拡張させ腎臓への血流量が増加し尿の生成をうながします。
- 胃酸分泌を促進
- 基礎代謝を増加
妊婦さんの、カフェインの影響は?
妊婦さんがカフェインを摂取した場合、妊娠中の身体はカフェインを分解、排泄するのにいつもより時間がかかります。特に妊娠後期には代謝速度が1/3になり、カフェインが体に長く残ることになります。つまり上記の作用が長く続くことになります。
また、カフェインは胎盤を通過してお腹の赤ちゃんにも移行します。肝臓の機能が未熟な赤ちゃんはカフェインを排泄できず、体内に高濃度のカフェインがとどまることになります。
赤ちゃん(胎児)の、カフェインの影響は?
カフェインの摂取量が1日150mg未満の妊婦さんに比べて、1日300mg以上摂取する妊婦さんは、流産のリスクが2倍、 コーヒー1日8杯以上で死産のリスクを高めるという報告があります。
※参考※コーヒー1杯のカフェイン含有量:100~150mg
カフェインは、胎盤を流れる血液の量を減少させますが、赤ちゃんの発育にも「関連がある」という報告と、「ない」という報告の両方があり、いまのところは結論がでていません。しかし、カフェイン摂取と同時に喫煙をする習慣のある妊婦の場合は、明らかに発育の遅れがみられ、早産の傾向も認められます。
市販の飲み物、カフェインはどのくらい?
市販されているペットボトル飲料のカフェイン量の一例です。ペットボトルの成分表記に記載があることも多いので、気になる場合は確認してみましょう。
※参考※コーヒー1杯のカフェイン含有量:100~150mg
覚えておこう!カフェインレスとノンカフェインの違い
カフェインレス・ノンカフェイン・デカフェ、といろいろな表示の商品がありますが、言葉によって意味が異なります。
◆カフェインレスとデカフェ
カフェインを含むお茶やコーヒーからカフェインを取り除いたもの。コーヒーであればカフェインを90%以上除去した場合のみ「カフェインレスコーヒー」と表示できます。「デカフェ」はフランス語で「カフェインレス」を表す言葉。使われ方も意味もカフェインレスとほぼ同じです
◆ノンカフェイン
カフェインを含まない原材料だけを使って作られたもの。たとえば「たんぽぽコーヒー」など。
カフェインをまったく含まないのは「ノンカフェイン」。「カフェインレス」と「デカフェ」は、除去しても少なからずカフェインが含まれており、多ければ10%程度含むこともあります。少しの摂取では大きな差はありませんが、妊婦さんは違いを覚えておくとよいでしょう。
授乳期にも注意が必要!
カフェインは母乳にも移します。授乳中のママが多量に摂取すると赤ちゃんがイライラしたり落ち着きがなくなったりすることがあります。「乳児突然死症候群」の発症率が増加することがわかっています。
妊婦さんOK!のカフェインレス商品
コーヒーや紅茶味のカフェインレス飲料の中でも、「妊婦さんOK」の表記がある飲み物を集めてみました。「妊婦さんOK」の表記があるものでも、砂糖や脂肪分が含まれているものは、糖分などの摂りすぎを避けるため飲みすぎにご注意ください。
※商品のご紹介部分は、編集部によるものです。医師・管理栄養士の監修ではございません。
サラヤ:ロカボスタイル 低糖質 カフェインレス カフェオレ
サラヤ:ロカボスタイル 低糖質 カフェインレス ミルクティー
*1食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~(厚生労働省HPより)
妊娠中に食べてOK・NGのウソほんと