この記事を監修したのは
諸隈誠一先生
医師、医学博士/九州大学大学院医学研究院 保健学部門 教授/日本赤ちゃん学会理事
1996年九州大学医学部医学科卒業。2006年4月より九州大学病院助教、2010年6月より同大学病院産科婦人科特任准教授、2011年1月より同大学環境発達医学研究センター特任准教授、2018年4月同大学大学院医学研究院保健学部門教授。
妊娠初期には、十分な睡眠をとったつもりでも日中に眠くなってしまう人がいる一方、夜、寝付くのに時間がかかったり、すっきり熟睡できない、いわゆる不眠に悩む人も多いようです。
妊娠初期の睡眠が不安定になる理由や対策を産科医の先生に聞いてみました。
妊娠初期の不眠の理由は?
なかなか寝付けなかったり、夜中に何度も起きてしまったり、夢ばかりみて熟睡できない…と睡眠が安定しないと、とくに昼間体を休められない働く妊婦さんにとっては切実な問題です。
妊娠と不眠の関係をはっきりと説明するのは難しいですが、ホルモンバランスの変化によるものではないかと考えられています。妊娠してトイレが近くなったり、いつもより体温が上がることや寝汗をかきやすくなることも、眠りが浅くなる理由のひとつかもしれません。
また、妊娠中の体は、赤ちゃんが育つ環境を整えるために妊娠初期からどんどん変化していきます。つわりと同じ時期に不眠になるケースもよくみられます。妊娠初期はわからないことも多く不安定になりやすい時期ですから、気持ちや身体の変化により眠れなくなっても不思議ではありません。
【妊娠中の不眠の原因例】
- ホルモンバランスの変化
- トイレが近くなること
- 体温が上がる・寝汗をかく
- 不安やストレス
妊娠中の不眠、改善法は”焦らない”こと
妊娠中の不眠は多くの場合、一時的なものでいずれ落ち着く症状です。まずは「今、眠れない」ことを気にしすぎないようにしましょう。焦らずに、夜になったらゆったりと過ごし、足湯などで体を温めたり、リラックスできる音楽を聴くなど好きなことから試してみては。うまくいかなくても焦らずゆったり構えましょう。
眠りの練習は、産後の赤ちゃんのスリープトレーニングにも
余裕があれば、妊娠中のいまから少しずつ眠りのトレーニングを実践してみましょう。これは、産後「赤ちゃんのスリープトレーニング」にもいかせます。
また、妊娠中、赤ちゃんはママのリズムで過ごしています。逆をいえば、妊娠中のママのリズムが、胎児の体内時計の形成に影響を与えるといわれますので、妊娠中は赤ちゃんのためにも「睡眠」に注目して過ごしましょう。
対策1:眠る前にお風呂に入る
眠る前に温め(38~40℃)のお風呂にゆっくり浸かることで、体温が一時的に上がります。その後、湯上り後に体温は下がっていきます。人は体温が下がっていくときに眠くなる傾向があるため、就寝前の入浴は入眠に最適と言われています。
対策2:眠る1時間前には、スマホと明るい照明をオフ
目から明るい光が入ると、眠るためのホルモン「メラトニン」の分泌が下がってしまいます。眠る1時間前までには、スマホや明るすぎる証明をオフにしましょう。
対策3:朝日を浴びる
朝、起きたときに積極的に朝日を浴びるようにしてみましょう。朝日を浴びることで体内時計がリセットされ、眠りのリズムが作りやすくなります。
対策4:お昼寝するなら15時くらいまでに
日中、眠くなってしまうのも妊婦さんならでは。眠いときにはお昼寝が一番ですが、15時過ぎにお昼寝をしてしまうと、夜眠くなりにくくなることも。
対策5:朝ごはんに、バナナ・納豆・卵・魚
朝ごはんの定番メニューの、卵や納豆、バナナ。じつはこれが夜の睡眠に役立ちます。これらの食材には「トリプトファン」という必須アミノ酸が含まれており、「トリプトファン」の作用で時間をかけて夜眠るころには、眠りのホルモンと呼ばれる「メラトニン」を分泌させることにつながります。
「メラトニン」の分泌によって、人は眠くなります。
妊娠中は時期は気持ちも不安定になり、不眠もつらく感じられがちですが、自己判断での睡眠サプリなどの服用は避けましょう。
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