この記事を監修したのは
諸隈誠一先生
医師、医学博士/九州大学大学院医学研究院 保健学部門 教授/日本赤ちゃん学会理事
1996年九州大学医学部医学科卒業。2006年4月より九州大学病院助教、2010年6月より同大学病院産科婦人科特任准教授、2011年1月より同大学環境発達医学研究センター特任准教授、2018年4月同大学大学院医学研究院保健学部門教授。
【目次】
妊娠初期の腰痛はホルモンが原因
妊娠初期の症状として、「腰痛」を感じることがあります。
妊娠すると“リラキシン”というホルモンが分泌されるのですが、リラキシンには、骨盤の関節を作っている結合組織やじん帯を緩める働きがあります。これは、赤ちゃんが骨盤の中を通りやすくなるようにする働きです。
妊娠するとまだごく初期からこの働きが始まりますが、骨盤が緩んだことで、関節を支えようと腰の筋肉の緊張が強くなります。この緊張が腰痛の原因になります。
【大まかに言うと...】
妊娠 → リラキシンが分泌される → 骨盤が緩む → 腰の筋肉が緊張する → 結果、腰痛に!
痛む部分は関節のあたり
妊娠初期の腰痛で痛む場所は、おもに骨盤やお尻の奥のほうにある関節の部分です。
骨盤はいくつかの骨が組み合わさって形作られていますが、妊娠すると、イラストのように仙腸関節が狭まって恥骨結合は広がっていきます。
痛くなるのは骨と骨のつなぎ目の関節部分です。正式には、仙腸関節・股関節・恥骨結合という場所が痛みがちです。腰だけでなく、おしりの奥のほうや足の付け根、恥骨あたりが痛むと感じることもあるでしょう。片側だけが痛むこともあります。
ちなみに..
妊娠後期になると、また腰痛が気になり始めることがありますが、後期の腰痛は原因が異なります。妊娠後期にお腹が大きくなってきて身体の重心が前に傾くと、お腹の重みを背側で支えることになり、自然に身体を反らしてバランスを取ろうとします。
この姿勢が背骨の自然なカーブを反対方向に反らしてしまうため、腰の筋肉や結合組織、じん帯に負担がかかります。お腹が大きくなった後はこうした理由で腰痛が起こることがあります。
妊娠初期の腰痛改善は、腹帯、温め、運動
■ 腹帯や骨盤ベルト
骨盤がゆるむことが原因で起きる腰痛は、骨盤の周りを腹帯や骨盤ベルトで支えるように巻くと、骨盤が安定しこれで痛みが和らぐことがあります。装着の位置が、普段着用する「ベルト」よりずっと下のほうなので、できれば助産師に正しい付け方を教えてもらいましょう。
骨盤ベルトで必ず腰痛がよくなる、というわけではありませんが、緩和される方も多いようです。なお、お腹全体もしめつけてしまうはくタイプのガードルは、あまり腰痛への効果は期待できません。
■ 温める・血行を促進する
冷えは、腰痛を悪化させます。普段の生活の中でも腰は冷やさないことが大切です。お腹を圧迫しにくい大きめのショーツをはいたり、苦しくなければ腹巻きを使ってみてはいかがでしょう。使い捨てカイロは、低温やけどに注意してください。
また入浴はシャワーで済まさず、できるだけ湯船につかって身体を温めて疲れをほぐしましょう。血行がよくなると腰痛がやわらぐことが多いようです。
■ 適度な運動をする
適度な運動で筋肉を動かすとよけいな緊張がとれ、腰痛の改善が期待できます。妊婦さん向けの腰痛体操やエクササイズも試してみるのもよいですが、妊娠初期はあまり無理をしないことがベスト。また、痛いのを我慢して無理やり動かすと、かえって身体を痛めることもあるので注意しましょう。
筋肉がしっかりしていると筋肉の力で身体を十分支えることができるので、腰痛にもなりにくいもの。体調を相談しながら、少しずつ体作りをしていきましょう。ウォーキング、マタニティスイミング、マタニティヨガ、マタニティビクスなどでからだを動かすことは、気分転換になるかもしれません。
まとめ
妊娠初期の腰痛は、お腹が大きくなってからの腰痛と原因が異なります。足の付け根まで痛むこともあって、つらいところですが、無理せず温めたり身体を少し動かすなどしてすごしましょう。妊娠初期に押してよい「腰痛のツボ(承筋)」もおすすめです。
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