この記事を監修したのは
諸隈誠一先生
医師、医学博士/九州大学大学院医学研究院 保健学部門 教授/日本赤ちゃん学会理事
1996年九州大学医学部医学科卒業。2006年4月より九州大学病院助教、2010年6月より同大学病院産科婦人科特任准教授、2011年1月より同大学環境発達医学研究センター特任准教授、2018年4月同大学大学院医学研究院保健学部門教授。
自律神経が不安定に
なにかの拍子に目の前がチカチカと点滅し、無数の星が瞬いているかのような感覚や、座っていた姿勢から急に立つ時に一瞬クラっとする立ちくらみ。妊娠前から感じているかたもいらっしゃるかもしれません。
この状態をよく“貧血になった”と表現しますが、これは「脳貧血」といいます。妊娠初期には、ホルモンの影響や体が新しい環境に適応していく過程で、自律神経が不安定になります。そのため血圧のコントロールが不十分になり、脳に血液が届かないと、このような「立ちくらみ」のような症状がよくみられます。これは必ずしも血液成分中の赤血球が少ない本当の意味での「貧血」とは限りません。
ただし、妊娠初期の検査で貧血の値が正常だと言っても油断は禁物。
妊娠経過と共に、血液は胎盤循環に適応するため水分量が増えていき、相対的に赤血球濃度が薄く、つまり貧血ぎみになります。それに加え、赤ちゃんの成長にも鉄分が必要となるので、ママの体の貯蔵鉄が使われ、母体は鉄分不足になりがち。妊婦さんの3~4割が、鉄欠乏性貧血になるといわれています。
妊娠中は鉄分を意識した食事を!
妊娠中期以降は、さらに鉄分が必要です。妊婦さんの貧血は少しずつ進んでいくため、体が慣れてしまい、動悸や息切れなどの自覚症状が何もないことも多いのです。貧血予防には、妊娠初期から鉄分を多く含む食事を意識していくことが大切。
妊婦健診中に数回、血液検査が行われます。食事からの鉄分摂取だけでは足りないと判断された場合には、飲み薬や注射で鉄分を補う治療を行います。
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